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老後

年金制度

定年退職後に大学で講義を受けている年老いた男性。
Christof Schürpf/Keystone

スイスの年金制度は賦課方式と積立方式の混合型。その目的は定年退職者に人並みの年金と経済的自立を保障することだ。

スイスの年金制度は相互補完的な3種の老齢年金、いわゆる3本の「柱」から成る。

三本の柱
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老齢・遺族年金(AHV/AVS)

第1の柱は、日本の国民年金に当たる老齢・遺族年金だ。スイスで働く、あるいはスイスに居住する全ての成人に加入が義務付けられている。雇用主も加入しなければならない。年金原資の約3割は各種の連邦税で賄われている。

老齢・遺族年金は現役世代が今の高齢者の年金を支払う賦課方式だ。積立金はない。年金の受給開始年齢は本人も遺族(遺児、寡婦、寡夫)も男性65歳、女性64歳だ。

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受給額は保険料の納付期間と収入によって異なる。最低限の生活を保障する額とされている。それでも最低限の生活に足りない場合、定年退職者は追加給付外部リンクを申請できる。追加給付は国費で賄われている。

社会の高齢化が進み、老齢・遺族年金の資金確保が大きな課題だ。しかし、これまでの改革案は国民の強い反対に遭ってきた。中でも、女性の定年年齢を65歳に引き上げる案が大きな議論を呼んでいる。

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企業年金(BVG/LPP)

第2の柱は企業年金だ。年金原資は雇用主と従業員が半分ずつ負担する。全ての従業員は労使の代表者が運営する年金基金に加入しなければならない。

企業年金は積立方式だ。被保険者は年金基金に保険料を支払い、年金基金は積立金を運用して利益を上げる。定年退職時には、積立金が年金に変換される。支払方法は年金基金によって異なる。つまり、被保険者は自身が将来受け取る給付のために貯蓄する。

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企業年金は老齢・遺族年金に加えて支給される。定年退職者がこれまでの生活水準を維持できるようにするためだ。

個人年金

第3の柱である個人年金は貯蓄口座のような仕組みだ。誰でも一定額を個人口座に払い込み、老後の資金を準備できる。預金は定年まで引き出せず、税控除の対象になる。

個人年金への加入は任意。銀行預金や生命保険の形で行う。元本は運用され、定年時に利息と共に引き出せる場合もある。

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個人年金は、比較的収入が多い人が定年後により高い生活水準を求めて収入の一部を蓄えるものだ。

関連リンク

連邦内務省社会保険局(BSV/OFAS):老齢・遺族年金の仕組み外部リンク(英・独・仏・伊語)

老齢・遺族年金と障がい者年金に関する情報センター:老齢・遺族年金の保険料と給付金外部リンク(英・独・仏・伊語)

老齢・遺族年金受給額のオンライン試算外部リンク(英・独・仏・伊・スペイン語)

連邦内務省社会保険局(BSV/OFAS):企業年金と個人年金外部リンク

連邦内務省社会保険局(BSV/OFAS):老齢・遺族年金のパンフレット外部リンク(英・独・仏・伊語)

仏語からの翻訳:江藤真理

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