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ローザンヌ国際バレエ、決勝で1、2、6位を日本人が占める快挙!

クラシックで軽々と高いジャンプをこなす二山さん 撮影 小川峻毅

第42回ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝で1日、日本人が1位、2位、6位を占め入賞した。過去にも日本人3人の入賞はあったが、1位、2位共日本人というのは初めて。1位は松本市の二山治雄(にやま はるお)さん(17)、2位は横浜市の前田紗江(さえ)さん(15)、6位はモナコ在住の加藤三希央(みきお)さん(18)。


 ケイ・マッゾ審査委員長は「今回の入賞者は、誰もがテクニック、音楽性、動きの3点において非常に優れていた。1位の二山さんはこの3点において特に優れており最高点を獲得した。2位の前田さんも同様に得点が2番目だったから。どこの国の出身だからといった視点で我々はダンサーを見ていない」とコメントした。

きちんとした動きと繊細さを持つダンサー

 二山さんは、「1位に自分の名前が呼ばれたときは本当にびっくりした。信じられないです。これも日本の家族や先生など多くの人に支えられたお蔭。感謝の気持ちでいっぱいです」と、受賞直後に興奮気味に話した。

 クラシックもコンテンポラリー(以下、コンテ)も完璧な踊りで、ポジションポジションがピタリと決まり、特にコンテの「ディエゴのためのソロ」では、一つ一つの動きを丁寧に仕上げ、踊り終わるや会場から大きなブラボーの歓声が響いた。「今日は自信を持って踊れた。細かいところで間違いがありましたが楽しく踊れました」と言う。

 二山さんは、1位入賞を飾った人とは思えないくらい、冷静に自分を見つめている。「表現力、音楽性、芸術性をもっと高めていきたい。できればクラシックをやりたいと思う。まだ分からないがサンフランシスコの学校に行き、基礎からきちんとやりたいとも考えている」

 7歳でバレエを始めたのは、「好きな女の子がバレエをやっていたから」。その後、一度もやめようと思ったことがない。高校の授業の後、松本市から長野市の「白鳥バレエ学園」に通い、そこで泊まって次の朝松本市に戻り、学校の制服を駅で両親から受け取って高校に通う毎日をこなしている。

 クラシックの男子のコーチを今年も務めたパトリック・アルマンさんは、二山さんを「彼はきれいな、きちんとした動きと繊細さを持ち、たくさんの可能性を秘めている。僕の好きなタイプのダンサーだ」と評価した。

1位 二山治雄(にやま はるお)さん(日本)

2位 前田紗江(さえ)さん(日本)

3位 プレシャス・アダムスさん (米国)

4位 ユデス・ダビッド・フェルナンド・ナバロさん(スペイン)

5位 ガロジャン・ポゴシアンさん(フランス)

6位 加藤三希央(みきお)さん(日本)

やはりロイヤルバレエスクールに

 2位の前田さんも「自分の名前を呼ばれるとは思っていなかったので、びっくりした。人を感動させるダンサーになりたいです」と喜びを語った。 

 前田さんの踊りはクラシック、コンテともに「優美な」ものだった。クラシックは、人があまりやらない難しいもので、つま先を立てたまま連続的に前に進むステップがある。それが終わったとき観客席からは、「ウオーッ」と歓声が上がった。

 コンテの「サラバンド」も、ピタリとポジションが決まりながらも、なめらかに流れるような動きだった。しかし本人は「コンテは音楽と一体化して踊ろうと心掛けてはいるけれど、こう踊りたいとは意識していない。練習どおりに踊っただけ」とあっさりとした答え。 

 「将来は、やはりロイヤルバレエスクールに行きたい。憧れはロイヤルのプリンシパルを務めるマリヤネラ・ニュネスさん」と目を輝かした。

第42回ローザンヌ国際バレエコンクールの参加者数には混乱が生じている。

昨年11月のビデオ審査で、世界35カ国から応募した295人(女子224人、男子71人)中、まず73人が選出された。

ところが2人が病欠となり、事務局は参加者71人と今年1月初めに発表。その後、コンクールが始まった1月29日には70人と正式発表したが、実際1月31日の準決勝には69人が参加した。このうち日本人は21人。

一方、今回の入賞者は6人と例年の8人からは2人も少ない人数だった。

この人数制限に、素晴らしい表現をおこなったブラジルからの6人の決勝進出者が1人も選ばれなかった理由があるかもしれない。

なお、事務局はこの数を「単に奨学金を提供した会社が6社しかなかったため。来年また8人になる可能性はある」と説明している。

安定した技術に支えられた踊り

 6位で入賞した加藤さんは、「本当にうれしかった。ただ、昨日の方がよく踊れた。でも昨日も今日も楽しく踊れました」と話した。

 加藤さんは、準決勝でも決勝でも、安定した技術に支えられた踊りを見せてくれたダンサー。モナコのバレエスクールで学んでおり、今年6月に卒業した後はモナコ王立モンテカルロバレエ団で踊りたいと昨日話していたが、今日の入賞で同バレエ団入りが確実になった。

 「これでやっとプロになれる。これからは自分で自立して生きていけると思うと本当にうれしい。それに、モンテカルロバレエ団は僕の夢のカンパニーだったから」との答えが返ってきた。

 加藤さんは東京生まれの福島市育ち。東日本大震災が起きた2011年の9月にモナコに留学している。「福島市で育った僕がここまで来れたことが奇跡だと思う。支えてくれた両親やバレエスクールの先生に感謝したい気持ちでいっぱいです」とコメントした。

学びの場

 ところで、今回のコンテの課題作品の振り付けのコーチとして1週間コンクールに参加したゴヨ・モンテロ氏は、コンクールを総括して、「ここは勝ち負けを決める場というより、多くのことを学ぶ場である」と強調した。

 さらに彼は、ボランティアでコーチを引き受けたことについて「ここの過去の入賞者としてお返しをするのは当然。それにここでは多くの懐かしい人々に会える。さらに自分の作品を若いダンサーが必死で踊ってくれている。この雰囲気には感動して涙が流れそうになるくらいだ」と話した。

 今回決勝に進出したのは20人。日本人3人を含む6人の入賞者以外の14人は、明日、ローザンヌ国際バレエコンクールのパートナーであるバレエスクールやカンパニーの校長や芸術監督との面接が待っている。こうした多面性も、忘れてはならないこのコンクールの良い点である。

この国際バレエコンクールはローザンヌで1973年、ブランシュバイグ夫妻によって創設された。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際バレエコンクールで、若いダンサーの登竜門とも言われる。
目的は伸びる才能を見いだし、その成長を助けることにある。
今年は、2014年1月26日から2月1日まで開催。
昨年11月のビデオ審査で、世界35カ国から応募した295人(女子224人、男子71人)中、73人が選ばれた。しかし、最終的な参加者は69人。
日本からは、最多の21人(女子16人、男子5人)がコンクールに出場した。
昨年と同様、二つの年齢グループ(15、16歳と17、18歳)に分かれて4日間の練習を行い、昨日決勝進出者が20人選ばれた。そのうち日本人は6人だった。
決勝では、この20人から、今年は6人の入賞者が選ばれ、全員同額の奨学金を得て、希望するダンススクールかカンパニーで1年間研修する。

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