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ハイジの「育ての親」高畑勲監督が死去

高畑勲監督(2015年撮影)
2015年、「かぐや姫の物語」の公開後、インタビューに答える高畑勲監督。東京都内で Keystone

日本のアニメ映画監督、高畑勲氏が5日、82歳で死去した。高畑監督が1970年代に生んだテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」はスイスでもよく知られ、スイスの観光・文化に大きな影響を与えた。

 スイス人作家ヨハンナ・シュピリが生み、高畑勲監督が育てた少女・ハイジの笑顔は、世界中で愛された。マグカップやTシャツに商品化されたり、スイスの広告ポスターに登場したりと、特に日本人にとってはスイスを象徴する存在となっている。

 テレビ放送のオープニング曲「おしえて」は日本のカラオケでもよく歌われ、スイス・ヨーデルの存在を世に知らしめた。多くのハイジ・ファンがクラブを作って集い、子供たちはハイジの人形で遊んだ。

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 高畑版ハイジはスイスにも大きな影響を与えた。ハイジの舞台となったグラウビュンデン州マイエンフェルトには、毎年多くの日本人観光客が訪れる。ハイジの家や山小屋を再現した観光スポット「ハイジ村」のホームページ外部リンクでも、高畑版ハイジが観光客の案内役を務める。

 観光資源としての役割は今なお絶大だ。ザンクトガレン州のスキーリゾート・フラムザーベルクは、ハイジをテーマにした新しいテーマパーク「ハイジ体験村」の建設を企画している。ホテルやレストラン、ケーブルカーのほか、野外演劇の上演などを予定。建設には総額1億フラン(約112億円)かかると見積もられる。2020年の開園を目指すが、建設用地売却などの是非をめぐり、地元で6月10日に住民投票が実施される。

スイスに「逆輸入」

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映画界を魅了し続ける物語「ハイジ」

このコンテンツが公開されたのは、 底抜けに元気がよくて明るい、スイスの象徴ともいうべき「ハイジ」。そのハイジが間もなくスイス・ドイツの合作映画としてスクリーンに戻ってくる。白黒の無声映画からアニメに至るまで、これまでに何度となく映画化されてきたハイジの物語。だが、今再び新しい作品が制作される理由は何だろう?

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 ハイジの物語はスイスで繰り返し映画化されている。15年に公開された「ハイジ アルプスの物語」の監督アラン・グスポーナー氏は、日本のツタヤのインタビュー外部リンクで「私の中のハイジの姿は、髪が短くて、いつも笑っていて、高畑監督のアニメのイメージそのもの」と語っている。

 2009年のロカルノ映画祭では、高畑監督に長年の映画界への貢献を表彰し名誉豹賞が贈られた。直近の作品「かぐや姫の物語」は15年に米アカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされた。

 ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、6日の放送外部リンクで「高畑監督は(共にスタジオ・ジブリを設立した)宮崎駿監督の陰に隠れがちだったが、高畑作品は宮崎作品に比べ静謐で哀愁が漂う。感情と孤独の物語だ」と評した。

 また、「おもひでぽろぽろ」(1991年)で、初めて恋に落ちた主人公のタエ子が幸せいっぱいに空を泳ぐシーンを挙げ、その違和感を感じさせない手法に「(高畑監督は)現実描写と抽象、見ているものと感じているものを融合させる」ことを得意とし、観る人に「忘れがたい場面を作り出した」とつづった。

(独語からの翻訳&編集・ムートゥ朋子)

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