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ランビエール、コストナー、ブニアティシヴィリが創作した「氷上のバレエ作品」をあなたに

「ル・ポエム」終了後、観客から割れるような拍手を受ける出演者の4人。左からピアニストのカティア・ブニアティシヴィリ、ステファン・ランビエール、カロリーナ・コストナー、そして浅田真央 Dominique Schreckling

ステファン・ランビエールが演出した「アイスレジェンド2016」は、先月22日に1回開催されただけだ。そこで、この華麗なショーを見逃したファンに、スイス公共放送(RTS)の映像からハイライトを2回に分けてお届けする。昨日配信の第1版は、日本から出演した浅田真央と高橋大輔に、この第2版はランビエールとコストナー、ピアニストのブニアティシヴィリがコラボで創作した奇跡の氷上のバレエ作品「ル・ポエム」に、焦点を当てた。

 ランビエールは、愛をテーマにしたこの作品「ル・ポエム」を、「氷上で繰り広げられる、3部で構成されるバレエ作品」と自ら表現した。ストーリー性のある作品を、普段は3分のショートプログラムに慣れているランビエールやカロリーナ・コストナーがその3倍もの時間をかけ表現豊かに踊り続ける。これはもう「バレエ作品」と名づけるしかなく、こうしてランビエールは新しい芸術分野を開拓したように見える。

 また、これは「音楽とフィギュアスケートとの幸いなる出会い」の作品でもある。ピアニストのカティア・ブニアティシヴィリは、それを次のように表現する。「自分が奏でる音の流れに没頭しながら、同時にスケーターの動きに配慮するとき、まるでそれまで知らなかった2人が舞台の上で突然恋に落ちるように、新しい感情やハーモニーが生み出される」

 あらすじは、コストナーが演じる女性がランビエールの演じる男性に恋するが、男性は「愛の狩人」のようにさまざまな人に思いを寄せ、コストナーを苦しめる。だがランビエールも、そうした自分の愛のあり方に苦しみ、自己破壊の方向に向かっていくといったものだ。

 日本から駆けつけた高橋大輔と浅田真央も、この作品の中で踊っている。特に浅田は、第1部で重要な役を果たし、高橋は第3部でランビエールの親しい「男友達」の役を演じる。

ショパンの「バラード」で第1部

 第1部は、コストナーの演じる女性が住む「村」の住人を紹介するパートで、その紹介役を浅田はブニアティシヴィリが弾くメランコリックなショパンの「バラード」の曲に乗り、演じていく。

 ショーの前日、「生演奏のピアノを自分のショーにも使ってみたい」と言っていた浅田は、まるでピアノの生の音に引き込まれたように、音の一つひとつの流れに身体をゆだね、緩やかに繊細に、しかもスピンやジャンプを美しく決め、踊った。観客は浅田の優雅さに圧倒され、大きな拍手を送った。

 村人には、スイスのサラ・マイヤーやロシアのタチアナ・ボロソジャルとマキシム・トランコフの姿も見える。

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ドビュッシーで「夢の中」に遊ぶ第2部

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 この細やかな心の動きの表現を、ブニアティシヴィリは丁寧にすくい取るようにして音を合わせ、まるで表現できない言葉の代わりとして「音」で補足しているよにも見える。こうして、ここでも「音楽とフィギュアスケートの幸いなる出会い」は見事に実現されている。

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ラヴェルの「ワルツ」が爆発する第3部

 ブニアティシヴィリが弾く稲妻のような音に合わせ、ランビエールと高橋が高くジャンプをする。第3部はラヴェルの「ワルツ」の波のうねりに乗りながら、高橋が演じる男友達やタチアナ・ボォロソジャルが演じる女友達などに心を動かすランビエールの姿と、それに苦しみながらも愛を確認しようとするコストナーとのデュエットが、エレガントで美しい。

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 だが、何と言っても「ル・ポエム」の圧巻は、こうした自分の愛のあり方に悩み、もだえるランビエールの狂気的な集中力から生まれる後半の踊りと、それと一緒に「もだえ叫ぶ」ブニアティシヴィリのピアノの音との「出会い」だろう。

 リンクを端から端へとスピードをつけて滑りながら同時にジャンプし、それに合わせてブニアティシヴィリがピアノのキーを打楽器のようにたたいて竜巻のような音を響かせる。

 最後には、独楽(こま)に変身したかと思わせるフルスピードのスピンで、自己破壊へと向かう内面の苦悩を表現するランビエールに、ブニアティシヴィリは弦がうなるような音と、キーが破れてしまうような打楽器音で、応える

 2人のコラボはここで燃焼し尽くし、完了したように見えた。

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